2025.4/20
歯周病新分類について ステージ・グレード
歯周病新分類(2017年に国際ワークショップでまとめられた分類)は、従来の「慢性歯周炎」「若年性歯周炎」などの区分を廃し、すべてを「歯周炎」として診断する統一的な枠組みを採用しています。これにより、患者ごとに病態の重症度や進行リスクをより正確に評価し、個別化した治療計画を立てることが可能になりました。以下、詳しい情報を説明します。

1. 歯周炎の統一的な概念
- 従来の区分の統合
昔は「慢性歯周炎」と「若年性歯周炎」に分かれていましたが、臨床的・病態的には連続性が認められるため、全体を「歯周炎」として扱います。 - 全身状態や生活習慣の影響も考慮
単に局所の炎症だけでなく、糖尿病や喫煙、遺伝的要因などのリスク因子をも評価に組み入れて、治療計画の参考にします。
2. ステージング(Stage)の導入
歯周炎の重症度および複雑性を評価するために、「ステージ」という概念が導入されています。主な評価軸は以下です。
- 臨床的な破壊の程度
これには臨床的な歯周ポケットの深さ、臨床的付着ロス(CAL: Clinical Attachment Loss)、歯槽骨吸収(レントゲンによる評価)が含まれます。 - 歯の喪失の有無
歯周炎による歯の喪失数も評価に入れ、全体的な支持構造の状態を把握します。 - 複雑性要因
例えば、治療における手技の難易度、咬合状態、隣接歯との関係性なども考慮されます。
一般的には、以下のように分けられます。
- ステージ I:
軽度の歯周組織破壊。局所的な臨床付着ロスが見られ、歯槽骨吸収も限定的。早期治療で十分に管理可能な段階。 - ステージ II:
中等度の破壊が認められる。臨床付着ロスや歯槽骨の吸収範囲が拡大し、治療にはより注意深い管理が必要な段階。 - ステージ III:
進行性の破壊があり、支持組織の大幅な損失が認められる。複数の複雑性要因が絡み、場合によっては歯の保持が難しい状況も。 - ステージ IV:
極めて高度な組織破壊により、咀嚼機能や審美性に重大な影響を及ぼす状態。治療の選択肢や予後の面で難易度が非常に高い段階。
3. グレーディング(Grade)の導入
ステージングと併せて、歯周炎の進行速度や今後の疾患進行リスクを評価するために「グレーディング」が導入されました。グレーディングの評価は以下の要素をもとに行われます。
- 疾患進行の速さ
過去の臨床記録や放射線写真から、臨床付着ロスの進行状況を推定します。 - リスク因子
喫煙や糖尿病など、疾患進行に影響を与える因子の有無やその程度。 - 全身状態
加齢やその他の全身疾患が歯周炎の進行にどの程度影響しているかを評価します。
グレーディングは、一般に次の3段階で評価されます。
- グレード A:
疾患進行が非常に緩やかで、リスク因子も比較的少ないと評価される場合。 - グレード B:
中程度の疾患進行速度および一般的なリスクが認められる場合。 - グレード C:
急速な疾患進行が見込まれ、喫煙や糖尿病などのリスク因子が強く影響している場合。
グレーディングにより、個々の患者のリスクに合わせた治療計画(例えば、治療の頻度や補助療法の導入など)が立てられます。
4. インプラント周囲疾患への応用
新分類は、自然歯の歯周炎だけでなく、インプラント周囲炎や**インプラント周囲骨吸収(peri-implantitis)**に対しても同様の枠組みを用いて評価が進められています。これにより、インプラント治療を受けた患者の管理にも統一的なアプローチが可能となり、予防と治療の質の向上が図られています。
5. 新分類の意義
- 個別化治療の推進
ステージとグレードの概念により、患者ごとに病態の重症度や進行リスクを正確に把握できるため、最適な治療戦略の策定が可能となりました。 - 早期介入と予防の強化
初期段階での診断やリスク管理が重視され、早期治療の介入が奨励されることで、進行性の疾患を未然に防ぐ取り組みが進められています。 - 国際標準への整合性
世界中で統一された診断基準として採用されることで、国際的なデータ比較や研究が進み、歯周病の根本的な理解と対策の向上につながります。
まとめ
新分類は、従来の単純な分類方法から大きな転換を図り、歯周炎を一元的に診断・評価するためのシステムです。
・「ステージング」によって局所の破壊度や歯の喪失の状況を把握し、
・「グレーディング」によって疾患進行のリスクや全身状態を考慮することで、
より個別化された治療計画が実施できるようになります。
ソアビル歯科医院では、この新分類に基づいた診断と治療を取り入れ、患者さま一人ひとりに合わせた最適な口腔ケアを提供しています。
最新の知見と国際標準に沿ったアプローチで、将来にわたって健康な口腔状態を維持するお手伝いをいたします。
以上が、歯周病新分類の詳しい情報となります。もし追加のご質問や具体的な治療例、対策についてのご相談がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。