【第1回】なぜ「お話」から始まるのか?ソアビル歯科医院がカウンセリングを重視する理由
【本連載にあたって:科学的根拠に基づく診療】 本連載は、歯科医療の専門論文(※)に基づき、当院の診療方針を体系的に解説する全10回の特別企画です。「ただ歯を治す」だけではない、最新の歯科医療行動科学が証明する「真に患者さまに寄り添う医療」とは何か。私たちが日々大切にしている診療の裏側と、その根拠を詳しく紐解いていきます。
1. 歯科医院に対する「不安」の正体
「歯医者に行かなければならないけれど、足が向かない」 そう感じている方は、決して少なくありません。
東京都足立区保木間に位置する当院、ソアビル歯科医院に来院される患者さまからも、「以前の歯医者では、椅子に寝かされるなり説明もなく治療が始まった」「何をされているか分からず怖かった」という声を耳にすることがあります。
実は、歯科医療に対する不安の多くは「痛み」そのものよりも、「自分の状況を理解してもらえていない」「一方的に進められている」という不信感から生まれます。
最新の歯科医療論文でも、医療者が多忙を極めるあまり、患者さまの個別性や価値観を顧みない「画一的な歯科医療」が繰り返されている現状への懸念が示されています。私たちはこの課題に対し、まず「対話」というプロセスを置くことで、患者さまお一人おひとりの不安を解消することから診療をスタートさせています。
2. 医療面接(カウンセリング)は「治療の一部」である
当院では、最初の「お話」の時間を、単なる事務的な問診とは考えていません。専門用語ではこれを**『医療面接(Medical Interview)』**と呼び、歯科医師としての最も重要な基本技能の一つと位置づけています。
論文によれば、医療面接には大きく分けて3つの重要な役割があります。
- 正確な情報の収集: 痛みがある場所だけでなく、その背景にある生活習慣や健康状態を把握すること。
- 信頼関係(ラポール)の構築: 患者さまと医療者が、同じ目標に向かって歩むパートナーになること。
- 教育と動機づけ: 患者さま自身が、自分の歯を守るための主役になれるようサポートすること。
「いきなり削る」のではなく「まず聴く」。これが、当院が掲げる「患者さま中心・患者さま本位」の医療の具体的な形です。
3. なぜ「聴くこと」が治療の質を上げるのか
「話を聴くだけで、治療が上手くなるのか?」と思われるかもしれません。答えは「YES」です。
例えば、同じ「奥歯の痛み」であっても、仕事で重要なプレゼンを控えてストレスを抱えている方と、育児中で自分のケアに時間が取れない方とでは、提案すべき治療計画やケアの方法は異なります。
論文でも指摘されている通り、特に2025年問題を控え、多くの持病や健康問題を抱える高齢患者さまが増える中、最初の面接段階でしっかりと**「傾聴」**を行い、それぞれの事情に対応しなければ、「この先生は自分に寄り添ってくれない」という心の溝を生んでしまいます。
患者さまが抱える「物語(ナラティブ)」、つまりその方の人生や生活背景を理解して初めて、プロとしての正確な診断と、後悔のない治療選択が可能になるのです。
4. 信頼関係を築く「共感」の技術
私たちは、単に知識としてお話を聴くだけではありません。心理学や行動科学の知見に基づいた「共感」の技術を大切にしています。
人間は、出会ってからわずか数秒で相手への信頼感を判断すると言われています。当院のスタッフ一同、患者さまが診療室に入られたその瞬間から、言葉使い、表情、相槌の一つひとつにまで気を配ります。
「この先生なら、自分の悩みを分かってくれる」 そう感じていただけることが、治療に対する不安を和らげ、ひいては脳が感じる「痛み」の軽減にもつながることが科学的に分かっています。私たちは、この**「共感的医療」**こそが、地域医療を支える土台であると考えています。
5. 足立区・竹ノ塚で「一生付き合える歯科」を目指して
歯科医療の技術は日々進化しています。CTやマイクロスコープなどの精密機器も確かに重要です。しかし、それらを操るのは「人」であり、受けるのも「人」です。
論文が説く「具有すべきコンピテンシー(能力)」の根幹には、常に**「人間行動の科学的理解」**があります。ソアビル歯科医院は、最新の技術を磨き続けるとともに、それ以上に「患者さまという一人の人間」と向き合う姿勢を磨き続けます。
もし、あなたが今、お口のことで不安を抱えていたり、過去の経験から歯医者へ行くのを迷っていたりするなら、ぜひ一度当院へお越しください。まずは、あなたの物語を私たちに聴かせてください。
次回予告:歯の痛みと「心・体」の意外な関係
次回は、論文の核心である**「全人的医療(生物心理社会的モデル)」**について解説します。歯の痛みは、実は口の中だけの問題ではないかもしれません。全身の健康、そして心の状態がどう関わっているのか、詳しくお話しします。
(※)参考文献:日本総合歯科学会雑誌 第10巻 第1号(2018) 「総合歯科医の具有すべきコンピテンシー―これからの歯科医療に求められる共感的・全人的医療の実践―」







